東奥日報 2013年9月26日
(本文)
あおもり 人ごよみ
むつ市を母港とする自身のヨット「貴帆(きほ)」に乗り、米西海岸ーハワイ間のレース「トランスパシフィック」で初出場2位。クラス別の着順では1位と会心のレースだった。多くのプロセーラーが腕を競う大舞台で、県人中心のアマチュアクルーが太平洋4千キロを横断。さぞかし過酷なレースと思いきや、津軽海峡の荒波に鍛えられた経験が役に立ったという。
「過酷さ、というのはなかったですね。津軽海峡の海流が複雑怪奇で、急に嵐になるなど気象も急変する。いつもそこで痛い目にあっているので。水不足の問題が一番深刻でしたが、それは受け入れて克服しないと、結果は出ない。諦めたら(そこで)終わる」
ー クルー8人中5人が県人セーラーでした。
「飛び抜けてうまいのは1人もいないが、総合力がすごくよかった。本当は全員県人の”チーム青森”で行きたかったが、仕事を3週間休まなきゃならない。仲間を1人ずつ説得しました」
「競争相手はプロが乗り込むが、うちは全員アマチュア。なかなか勝てないが、ヨットにはレーティング(艇の性能差によるハンディ)や気象もある。強いチームでも簡単に勝つことはない」
日焼けした表情を崩さず、淡々と語る。本業は会社経営。環境や化学分野などのビジネスマッチングを手がけている。
ー ヨットは会社経営にも通じるとか。
「そう、組織づくりが強いチームが勝つ。ヨットには多様なポジションがあり、そこを適材適所で互いに尊重し合い、教え合い、チームの総合力を高めていく」
「会社経営も同じ。ヨットを始めてから、人材の使い方が変わった。(社員が失敗しても)彼にはこういう能力もあるから、長い目で見ようかーと。会社の組織も筋肉質になりましたね」
次の照準は来春の沖縄ー東海ヨットレース。出場は3度目。もちろん優勝を狙う。
「春の日本近海は気象状況が悪く、トランスパシフィックよりも過酷なレース。でも、青森の団結力がピタッと合えば、今度こそいける」
ー ヨットの魅力は。
「二面性ですね。一般社会から離れた非日常の空間を持てる。あとは、海が荒れた時の極度の緊張間。その緩急がいい」
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